ゴールのないバス

先日、数少ない日常会話をしてくれる女性とバスが一緒になったので声をかけた。「あら、お疲れ」笑顔で返事をされたので僕に敵意を抱いていないと思い、「ガウチョパンツって素敵ですよね」「そうですね」と軽快なトークを交わしていた。また、途中で僕の発言に無反応というノンバーバルコミュニケーションで返してきたので、今は話したくないんだな、と実習で得た知識をフル活用して笑顔で窓の外を見ていた。

バーバルの有無を問わずコミュニケーションを充分にとれたので、今日は久々に女の子と一緒に帰れるぞイエーイと喜んでいた。

「じゃあ、途中まで一緒に帰らない?」と僕は彼女に言ったがまたもやノンバーバルコミュニケーション。ハハハ、恥ずかしがり屋なんだな、配慮が欠けていたよと反省していた。

場の空気を読もうともう一度窓の外を見るために顔をあげると、そこには横でコミュニケーションをとっていたはずの彼女が歩いていた。



乗っていたバスは学校と駅の往復バスなんだ。一方通行の道ばかりだと、駅に着いたバスは学校には戻れない。僕から出発したメッセージは一方通行の道を通っていた。彼女という目的地から二度と戻ってくることはない。